ステージ4と診断されたら


「ステージ4」と「末期がん」を混同しないでください。

ステージ4と診断された時のがんの状態


高度進行がん/ステージ4と判定された場合に、“大きな勘違い”をなさる方をしばしばお見かけします。
その勘違いとは「ステージ4=(イコール)末期がん」という勘違いです。

進行がんの広がり具合を表す一般的な分類法に、“ステージ(Stage)”があります。
比較的軽症なステージ1に始まり、中等症となるステージ2(a~c)、そして3(a~c)を経て、高度に進行したステージ4に至ります。そして、このステージを分類する指標となるのが、
初発したがん腫瘍の大きさ
周囲のリンパ節への広がり
他の臓器に転移しているか否か、といった項目なのです。

そこで、知っておくべきことは、病状の程度とステージの分類は“必ずしも一致しない”ということです。
なぜなら、ステージ分類は治療方法を選択するときの目安や、がん統計などに用いる際の区分の一つにすぎないからです。
言い換えると、決してがん病状の深刻さを表したものではないのです。

それでは、“末期がん”とはどのような状態を表すのでしょうか。それを分かりやすく例えると、
・自立した食事摂取や、日常生活における動作が困難になってしまった、
・著しく体が衰弱し、長時間の臥床を余儀なくされてしまった、
・体力の低下により、食事介助やベッド上での排泄が避けられなくなってしまった、
といった病状などでしょう。もちろん、こうした末期症状に至ってしまえば、ほとんどの方は治療の意欲を失ってしまうはずです。

良くお考えください。
「高度進行がん/ステージ4」と判定されても、幸い、末期がん症状が無く、歩くことも充分に可能。ましてや、新たながん治療を模索できる活力があるとしたなら、たとえ標準治療では「手だて無し」と判定されてしまっても、なすべき治療を行う時間は「まだ、まだ」充分に残されているはずです。
とにかく、もう一度冷静になるべきです。今ここで希望を捨ててしまうには、あまりにも早すぎるからです。

高度進行がん/ステージ4と判定された後の問題点


最近になってクローズアップされ始めたのが、高度進行がん/ステージ4と判定された後の医療対応です。
既に述べたとおり、高度進行がん/ステージ4と末期がんはまったく別ものです。当然、判定がステージ4だからといって、衰弱を来してしまった方々ばかりではありません。ある方は友人と一緒に登山を楽しみ、また、ある方は日々のゴルフを楽しんでいらっしゃる。しかし、そうした方々でさえ、がんの広がりによってはステージ4と区分されてしまうのです。

とはいえ、ひとたびステージ4と判定されると、治療環境も一変してしまいます。なぜなら、統計的には根治の見こみが非常に乏しいため、担当医の頭の中では「治療の手だてなし」、「治療する意味がない」といった性急な判断に偏りやすいからです。そして生じる問題点が、がんに伴う一般的な不具合の対処すらないがしろされてしまう現実なのです。

思うように食事がとれず痩せ細ってしまっても、何ら対処をしてくれない。その結果、タンパク質が不足してしまい、下半身(脚)などに著しいむくみ(浮腫)が生じても、そのまま放置されてしまう…。さらに進行し、「胸水」や「腹水」といった臓器に水が溜まる病状が現れても、利尿剤を処方する程度の消極的な対処しかしてもらえない…。つまりステージ4に区分されてしまうと、「今さら何をするの?」とばかりに、早々と治療を切り上げてしまう“診療放棄”が横行してしまうのです。

そして主治医の口からは「ホスピス/緩和ケア病院を紹介しましょう」、といった提案…。
まだ日常生活は充分可能なのに、突然、“末期がん”にされてしまったかのような現状に無念さを感じずにはいられません。

未来を見すえた治療を目指そう


おそらく、高度進行がん/ステージ4との判定によって不快な思いをした方も大勢いらっしゃることでしょう。だからといって希望を捨ててしまうには早すぎるのです。ステージ4の判定とその病状への対処は、担当医によってもすべて異なるからです。もちろん、私たちが実践するがん免疫治療によって、すべての方のがん細胞を消失させられるとは言えません。しかし、逆を言えば適切ながん免疫治療の運用によって、快適な生存期間の延長がもたらされる例もけっして少なくはないのです。

だから、「まずは、がんの進行を遅らせよう」。次いで、がんの進行が緩やかになったなら「次はがんの成長を妨げて、“共存”を目指そう」。そして、がんとの共存がかなったなら…、「まだ、まだ、願っていたことをかなえてもらおう」。
私たちは常にそうした気持ちでがんと向き合っています。

各がん種の5年生存率


【日本人に多いがんのステージ4における5年生存率】
肺がん  :6.4%
膵臓がん :1.8%
胃がん  :6.6%
大腸がん :17.3%
肝臓がん :3.1%
食道がん :10.0%
乳がん  :39.3%(女性のみ)
前立腺がん:53.4%
子宮がん :21.0%(女性のみ)

しかし、治療の選択次第で余命は大きく変わる。


例えば、大腸がん/ステージ4の余命の中央値は2年と報告されています。
ここで言う「余命の中央値」とは、統計によって半数(50%)の方がおおよそこの期間で亡くなってしまうであろう、という推計値のことです。当然、「余命2年」との告知であっても、必ずしも「2年しか生きられない」という意味ではないのです。
したがって余命宣告は、あくまで統計的な一つの目安にすぎません。

緩和ケアとは?


がんの終末期に至ると、がん腫瘍そのものによる症状以外にも、多くの不具合・症状が現れてきます。こうした場合に“症状を緩和する”ことで、生活を支援するのが緩和ケアの目的です。このほかにも、ご本人が必要とされる情報の提供や、ご家族/医療スタッフ間のコミュニケーションを取り持つのも緩和ケアの一環と言えるでしょう。

しかし、あまりに早い段階で緩和ケアに移行することは、けっして喜ばしいことではありません。
なぜなら、緩和ケアという医療カテゴリーは「症状緩和」が最大の目的であって、がん治療そのものは行わないことが大前提となっているからです。

先ほども例示しましたが、がんの終末期として緩和ケアに移行すべき時期の目安は、
・自立した食事摂取や、日常生活における動作が困難になり始めた、
・著しく体が衰弱し、長時間の臥床が余儀なくされたころ、
・体力の低下などで、食事の介助やベッド上での排泄が避けられなくなったころ、といった状況になって初めて決断すべきものなのです。
幸いにもそのような状況に至っていな

っかりと、前を向いて治療を続けていきましょう。


記事 宇野克明 東京MITクリニック院長・医学博士

Katsuaki Uno

がん免疫治療と向き合って36年。中でも1999年に細胞の免疫性に着目してがんを診断するがん免疫ドック(現リスクチェッカー)を開発し、2000年にそのシステムを用いて免疫細胞の疲弊状態「免疫枯渇現象」、ならびに免疫細胞の機能障害「リンパ球失調(サイトカインストーム)」の存在を報告。2012年には精密がん免疫検査システム「がん免疫ドック」の解析ロジックを改良し新たにリスクチェッカー検査としてリリースしました。そして2012年9月東京MITクリニック開設。2014年9月医療法人社団東京MIT設立・理事長就任。著書多数。


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