例 : 大腸がん(結腸がん・直腸がん)標準治療の場合
目次
がん治療の進み方
がん治療の内容はステージ分類によってほぼ決まり、がん医療に関わる学会が定めた「がん診療ガイドライン」に基づいて治療が開始されます。
ここでは大腸がん(結腸がん・直腸がん)の標準治療を例にご説明します。
ステージ0~I期
この段階では内視鏡を用いてがんが切除できるか確認します。もし、可能であれば以下の流れに沿って内視鏡を用いた切除が行われます。内視鏡切除 → 病理診断を経て → 経過観察
内視鏡切除 → 病理診断を経て → 外科手術(腹腔鏡下手術、あるいは開腹手術)→ 再度の病理診断 → 経過観察
内視鏡を用いた6つの切除方法
1. コールド・フォーセプス・ポリペクトミー
茎のない5ミリ程度の小さながんを専用の鉗子でつまんで切除します。
2. コールド・ポリペクトミー
茎のない1センチ程度の小さながんを、投げ縄状のワイヤー(スネア)によって持ち上
げながら根元から切除します。
3. ポリペクトミー
茎のあるがんをスネアで締め付けて、高周波電流で焼き切ります
4. 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
茎がなく、盛り上がりに乏しい2センチ程度までのがんの下部(粘膜下層)に生理食塩水を注入し、浮き上がらせてから切除します
5. 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
2センチ以上の大きながんの場合に、浮き上がらせたがんの周囲を高周波ナイフによって切り開き、粘膜下層から剥ぎ取ります。
6. 内視鏡的分割粘膜切除術(EPMR)
やや進行したステージ1.2.3
ステージIの大腸がんでも、がんが粘膜下層の1ミリ以上の深さまで達している場合(T1およびT2)と、ステージII、IIIの場合、外科治療(手術)が行われます。
ステージIIで再発リスクが高いケースや、ステージIIIでは手術後に化学療法も行われます。
治療の流れは以下の通りです。
外科治療(腹腔鏡下手術または開腹手術)→ 病理診断を経て→ 経過観察、もしくは化学療法を併用
外科治療(腹腔鏡下手術または開腹手術)→ 病理診断を経て → 化学療法の併用
腹腔鏡を用いた手術には術者が行うものと、ロボット支援機器を用いて行うものがあります。後者は術者が直接手術機材を操作するのではなく、ロボット支援機器を介在させて手術を行います。この場合は、術者は操作台に座ってモニターを見ながらロボットアームを操作します。米国製の「ダビンチ」という装置が有名で、現在では、日本にも数多く導入されています。近年では腹腔鏡の直接操作・ロボット操作にかかわらず、多くの病院において大腸がん手術の90%がこの方法で行われています。
このほか、手術によって「肛門が残せるかどうか」という問題があります。残すかどうかは外科医にとっても大きな決断ですが、患者さんにとっても人工肛門(ストーマ)になるかならないかが重要な関心事になるでしょう。
化学療法の前には、あらかじめ手術によって摘出されたがん組織の遺伝子検査を行い、その結果に基づく治療計画が策定されます。どの薬をどのくらいの量、何日間使用するかという「レジメン」(薬物の処方計画)を複数作成します。そして、治療には化学療法剤を単独で投与することもあれば、「キードラッグ」と呼ばれる主要な薬剤を中心に複数の薬剤を組み合わせることもあります。
ステージIV
ステージIVの大腸がんの治療では、肝臓や肺、腹膜などに転移したがん(遠隔転移巣)が手術で切除できるかどうかが最初に検討されます。
転移巣が切除できる場合は、原発巣も切除可能 → 原発巣と転移巣を切除
原発巣が切除不可の場合 → 化学療法、放射線治療、対症療法
転移巣が切除できない場合は、原発巣が切除できても通常、手術は行いません。化学療法や放射線治療、対症療法を行います。
ただし、原発巣を切除しなければならないケース、例えば、出血による極度の貧血がある場合、腸閉塞による症状が懸念される場合、ならびに腫瘍の圧迫によって痛みや臓器障害が出ている場合などには、根治手術ではなく「姑息手術」という症状緩和手術も行われます。
直腸がんの手術は難易度が高く、技術差が顕著です。直腸以外の部分、例えば横行結腸やS状結腸は、お腹のなかから引っ張り出して手術できるため、比較的簡単です。
ステージIVの化学療法は、前述のレジメンに基づいて行われます。
放射線治療は、大腸がんには、根治を目的とした放射線治療は通常行われません。
局所の進行性直腸がんに対してのみ、術前・術中・術後などに補助放射線治療が行われることもありますが、生存率が向上することは稀だと考えられます。そのほかに放射線治療が行われるケースとしては、例えば骨転移を生じた際の疼痛緩和目的などがあります。
放射線治療の効果は、使用する装置に依存する部分が大きく、機器の優劣が結果に影響します。そのため、放射線治療を積極的に行うかどうかは病院によって異なります。
対症療法は、原因を直接治療するのではなく、症状を和らげることを目的とした治療です。大腸がんそのものを治す根治治療ではありません。
引用元 : 宇野克明 著「身近な人ががんになったら迷わず読む本」ごま書房新社
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