生存率と死亡率


死亡率

日本では高齢者の人口が増えたことにより、がんによる死亡者が増加しています。そのため、「昔も今も、がんに罹ったら命が危ない」「がん治療はあまり進歩していない」と誤解している人も多いかもしれません。しかし、実際には死亡者は増えているものの、死亡率は減少傾向にあります。

過去の人口構成をもとに毎年のデータを見てみると、ほぼ毎年のように死亡率は減少し続けているのです。この数値は年齢調整死亡率という指標で示されますが、男性は1995年(平成7年)ごろをピークとして30年間で35%以上減少し、女性は1960年(昭和35年)ごろをピークとして、ゆるやかながらも約40%減少していると推計できます。

5年生存率(2014~2015年)

以前、5年生存率は「5年相対生存率」として公表されていました。これは、がんと診断された患者さんが5年後に生きている割合と、日本人全体の5年後の生存率を比較したものです。

例えば、がんと診断されてから5年後に100人中50人が生存している場合、実測生存率は50%です。しかし、日本全体で1000人中800人が生存している( 20 %の人が亡くなっている)場合、がん患者の5年相対生存率は62・5%となります。したがって、5年相対生存率はがん患者さんが5年後に生きている確率ではなく、実際の確率はそれよりも低くなることが多いのです。

また、実測生存率が高いがんの場合には、相対生存率が100%を超えることもあります。こうした問題を考慮し、国立がん研究センターでは純生存率(ネット・サバイバル)を採用しています。

それによると、2014(平成26)~2015(平成27)年の全がんの実測生存率は60・3%、ネット・サバイバルは66・2%と発表されています。

私が出版した関連書物でも、国立がん研究センターの数値をもとにすべて純生存率を使用していますが、これも5年後に生きている確率ではないことを忘れないようにしましょう。

各がん種の5年生存率

【日本人に多いがんのステージ4における5年生存率】

肺がん  :6.4%
膵臓がん :1.8%
胃がん  :6.6%
大腸がん :17.3%
肝臓がん :3.1%
食道がん :10.0%
乳がん:39.3%(女性のみ)
前立腺がん:53.4%
子宮がん:21.0%(女性のみ)


引用元 : 宇野克明 著「身近な人ががんになったら迷わず読む本」ごま書房新社


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